小野としこの“やっさかレポート”
平成22年1月18日
「曲尺と木遣り」
新年を迎え、各種団体の新年会が開かれています。
私もお邪魔させていただき、その団体の現在おかれている環境や問題点などを伺い、勉強させていただいております。
昨日は、伊豆長岡建設組合の平成22年太子講新年会にお招きいただきました。「太子講」って何でしょうか? 太子は太子様、もとより聖徳太子を指していま
すよね。講とは、講座、仏事、結社、相互扶助団体などですから、すなわち聖徳太
子を奉賛する団体のこと、「太子講」とは、大工、左官、鍛冶屋などの職人仲間
で、聖徳太子を守護神として祀っている職業講と言うことです。
これは、聖徳太子が、寺院建築史上大きな存在であったことに由来いたします。
世界最古の木造建築である法隆寺を建立したことで知られる聖徳太子は、貿易のことで訪れた百済の国から多くの大工道具と建築技術を持ち帰ったといわれています。その中に大工の「3種の神器」の一つである曲尺(カネジャク・サシガネ)があったといわれています。
曲尺はL字型をした物差しのことです。これがあると複雑な木工作業が可能となります。その秘密は裏側の目盛りである裏目にあります。様々な直角三角形の性質を利用した、非常に難解な高等数学にも匹敵する理論が隠されているからで、外見は簡単な道具でも、その機能を使いこなすには、想像を超える熟練が必要となるそうです。
この曲尺があったればこそ、そして使いこなす技術があらばこそ、匠の技が伝承されて来たと言えるのではないかと、会長の大浦さん。
今ではこの講に水道屋さん、電気屋さんなども加わり、聖徳太子に感謝の意を込め、命日に因んで、組合総会を兼ねて「太子講」を開催するのだそうです。
聖徳太子の表具(掛け軸など)を宿の床の間に掲げてお参りし、そのあと飲食を楽しむ習わしが連綿と続いているということ。私はこの会に初めてお招き戴いた時、今に匠の技を継承する、これぞ生きている文化と感嘆しました。
この日に先駆ける1月13日、静岡市で、「静岡県技能マイスター認定式」「技能五輪国際大会・全国大会・全国障害者技能競技大会入賞者表彰式」が開かれ、私は産業委員長として、川勝知事とご一緒に参列させていただき、県議会議長の祝辞を披露いたしました。優れた技能を有し、後進の指導育成に尽くされた方々のご貢献に敬意と感謝の意を表した次第です。「技能の継承」や「技術者の確保」は、現在あらゆる分野で大きな課題となっています。
宴たけなわとなり、木遣りが披露されました。
木遣りとは、「木遣り渡し」から来たもので、本来木を出す時歌った唄が伝わって来たのだそうです。山に木が立っている、その木を切る、木は柱になる、家の中心となる、「この家に尽くしてくださいよ」「この家のためになってくださいよ」との願いを込めて歌う唄だそうです。
この歌は兄と側(がわ)からなっていて、兄が「お~やるぞ」と言うと、側が「はい、やります」と答えるという、掛け合いになっているのだそうです。
木場の木出し、上棟式のほか、結婚式など大工、木出し、とび職等建築職にある方々の慶事に歌われて来ました。結婚式では「嫁さん、どうか尽くして下さいよ」との願いが込められているのだそうです。また、職人さんのお葬式で故人を見送る時にも歌われます。「よくやってくれました。あなたのご尽力・功績、あるいは心意気が後世に繋がりますように」との思いが込められているそうです。
古い習わしを伝えて行くって素敵なことですね。
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